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数学を鍛えよう

三角関数 方程式の表す意味

次のツイートを見てほしい。

この方程式が意味することは何だろうか?

この方程式を解けと言われたら、まずは計算しやすい値を代入していくだろう。今回は、\thetaの範囲も狭く、簡単に解 \theta=90°が見つかる。

では、なぜ解が90°になるのか?なぜ範囲が60°<\theta<120°なのか?この方程式の表す意味を考えよう。

 

おそらく、これから記述することは、「そんなの気づくわけない」というようなひねくれた内容に思うかもしれないが、方程式に対するこのようなアプローチができることを知り、この問題の背景を味わってほしい。

 

まずは、60°<\theta<120°という範囲について考えよう。この範囲をとるような\thetaはどのような図形が考えられるだろうか?分かりやすい例としては、正三角形ABCにおいて、AB上に点Pをとった時の、∠APC\thetaと考えることができる。

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【正三角形ABCのAB上に∠APC=\thetaとなる点Pを取った図】

 

このように、範囲を見ることで、具体的な図形で\thetaを表現できた。

 

次は、式そのものを見ていこう。

式を見ると、\sin(120°-\theta)\sin\thetaがあるから、これらをうまく作り出す方法を考える。分かりやすくするために、正三角形の1辺の長さを1として考える。

ここで、△ABCにおいて、∠APC=\theta,∠ACP=120°-\thetaだから、正弦定理より、

\frac{1}{\sin\theta}=\frac{AP}{\sin(120°-\theta)}

AP=\frac{\sin(120°-\theta)}{\sin\theta} 

さらに、与えられた方程式を変形すると、

\frac{\sin^2(120°-\theta)}{\sin^2\theta}=\frac{1}{4}

\frac{\sin(120°-\theta)}{\sin\theta}=\frac{1}{2}

つまり、APの長さが\frac{1}{2}、すなわち、点PABの中点にあるとき、の∠APCが求める解であることがわかる。このとき、当然、∠APC=90°である。

 

どうだろうか?範囲や式に注目することで、複雑な方程式を図形的に解くことができた。少し無理やりかもしれないが、このような解き方もあるということを知ってほしい。

 

【研究課題】

この記事では、平面図形で考えたが、立体図形で考えるとどうなるだろうか??

ヒント:体積比を考えることで、方程式の2乗を外さずに解くことができる。

三角関数の問題①

今回は下の問題の解説である。

 

 

三角関数と軌跡の融合問題で、少し複雑である。しかしながら、タイトルは「三角関数」としたが、数Ⅰの三角比と数Ⅱの図形と方程式の知識だけで解くことができるので紹介する。

まずは、この先の解説で必要な知識を簡単に確認しておく。

なお、解説は数Ⅰの知識のみを使うため、弧度法を度数法に変えて説明する。

 

・三角比の定義

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・三角比の相互関係 \tan\theta=\frac{\sin\theta}{\cos\theta}

・円の接線の公式 

x^2+y^2=r^2上の点(a,b)における接線の式は、ax+by=r^2

 

これだけである。では、問題の答えを見ていこう。

まず、与式の分母に\tan\theta,\sin\thetaがある点に注意しよう。これにより、\tan\theta≠0,\sin\theta≠0だから、\theta≠0°,90°,180°,270°である。

 

y=-\frac{1}{\tan\theta}x +\frac{1}{\sin\theta}     ここで、\tan\theta=\frac{\sin\theta}{\cos\theta}より、

y=-\frac{\cos\theta}{\sin\theta}x +\frac{1}{\sin\theta}     両辺に\sin\thetaをかけて

\sin\theta y=-\cos\theta x+1     式を整理して

\cos\theta x+\sin\theta y=1

 

ここからあることに気づくだろうか??

三角比の定義より、点(\cos\theta,\sin\theta)は、原点を中心とする半径1の円の点である。よって、円の接線の公式より、\cos\theta x+\sin\theta y=1は、原点を中心とする半径1の円の点(\cos\theta,\sin\theta)における接線である。

よって、求める領域は下のようになる。

言葉で表すと、

x^2+y^2≧1を満たす領域。

ただし、\theta≠0°,90°,180°,270°より、点(1,0)(-1,0)(0,1)(0,-1)は除く。

 

以上である。

三角比の相互関係を用いて、接線であることに気づくことができれば簡単な知識で解くことができる。

三角比の基礎を確認できる問題なのでぜひ復習してほしい。

 

 

フェルマー数とその性質

フェルマー数について知っているだろうか。

フェルマー数とは、

F_n=2^{2^n} +1 (n=0,1,2,…)

で与えられる数である。

見ての通り、指数にさらに指数がついていて、非常に大きな割合で増加していくことは容易にわかる。名前の通り、数学者フェルマーはこの数と深くかかわり、様々な研究を行った。このフェルマー数の性質を見ていこう。

 

1.フェルマー素数

ここでは、F_n素数になる場合について考えてみよう。

まずは、具体的な値を求めると‥

F_0=2^{2^0}+1=3

F_1=2^{2^1}+1=5

F_2=2^{2^2}+1=17

F_3=2^{2^3}+1=257

F_4=2^{2^4}+1=65537 

!!!??もう気づいた人もいると思うが、上の数はすべて素数である。このように、フェルマー数が素数になる場合を特に、フェルマー素数という。このまま続ければ、すべて素数になるかもしれない!そう思った人もいるだろう。数百年も前、フェルマーも同じように考えていた。しかし、計算技術が向上してさらに大きな値が求まるようになると、

F_5=2^{2^5}+1=4294967297=641×6700417  合成数

このように、F_5素数でないことをあのオイラーが発見した。

そして、さらに計算が進められ、コンピューターが飛躍する現在、F_5からF_{32}までのすべての数が合成数であることが示されている。つまり、フェルマー素数は5つしか見つかっていないのだ。

たとえば、F_{20}は、素数でないことは示されているものの、1つも素因数が発見されていない。つまり、合成数であるのにもかかわらず、F_{20}を割り切る数は見つかっていないのだ。このように、フェルマー数は、膨大な数を生み出し、素因数分解の難しさを際立てている。フェルマー素数が無限にあるかはいまだ謎のままである。

 

2.正多角形の作図

ここでは、少し話を変えて作図について見ていこう。まずは、数学でいう作図について、簡単に確認しておく。

・使えるのは定規とコンパスのみ

・定規は、直線を延長すること、2点を通る直線を引くことのみできる

・初めに単位(長さ1)の直線があたえられている

数学の作図において、定規で長さを測ることはできないことだけ覚えておこう。

では、本題の正多角形の作図について。小学校や中学校では、正三角形の作図を学習する。また、90°の作図ができるから、正方形も当然作図できる。では、ほかの正多角形はどうだろう。ここでは特に、素数の数だけ角をもつ正多角形について考えよう。例えば、正七角形や正十一角形。作図できると思うだろうか?ここで、驚くべき事実がある。

pがフェルマー素数ならば、正p角形は作図可能である。

どうだろうか??作図にまでもフェルマー素数がかかわっている。理論上では、正十七角形や、正六万五千五百三十七角形も作図可能である。ただし、実際に作図するとなると、非常に大変で、手作業ではほぼ不可能である。しかしながら、この事実が数学的に示されたことに大きな意義があり、フェルマー数にさらなる広がりを与えてくれた。

 

 

最後に振り返りながら問題を解いておこう。

 

そして、作図についても少しだけ。

Q 次のうち、作図できる数をすべて選べ。

1.  \sqrt{5}

2.  \sqrt{\sqrt{5}}

3.  \frac{1+\sqrt{5}}{2}

4.  \sqrt{\pi}

知ってから語る「偏差値」

アメリカに住んでいるマイケルと日本に住んでいる花子の数学の能力を比較してみよう。二人は同じテストを受けることができないので、それぞれ別のテストを受けた。結果は以下の通りである。

 

マイケル:85点

花子:75点

 

さて、どちらが優秀といえるだろうか。点数が高いからマイケルのほうが優秀だ!といえるだろうか?二人は別々のテストを受けているので、テストの難易度は異なっていたかもしれない。よって、点数だけでは比較が難しい。では、平均点と比べた次の場合はどうだろうか。

 

マイケル:85点    全体の平均:50点

花子:75点      全体の平均:50点

 

 

全体の平均も等しいので、やはりマイケルのほうが優秀であると言えそうである。

 

こんな状況において、得点と平均では比較できないことに注目したのがカール・ピアソンである。彼が生み出したアイデアこそ、データのばらつきの大きさを表す標準偏差という考えである。

それぞれが受けたテストの得点の分布をみてみよう。

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グラフを見ると、マイケルの受けたテストは、ばらつきが大きく、花子の受けたテストはばらつきが小さいことが分かる。そして、花子のほうがマイケルよりも集団から一歩飛び出している。そして、実際に偏差値を求めてみると‥

 

マイケル:64.3

花子:67.2

 

結果として、花子のほうが優秀であると言えるのである。

このように、得点と平均だけで優劣をつけることは難しい。このグラフから分かるように、データのばらつきによって優秀さは大きく変わってしまうからだ。そこで、得点と平均点に、標準偏差というデータのばらつきを考えることで、より正確に優秀さを比較することができる。そして、この3つを組み合わせたのが、まさに偏差値なのである。

 

では、実際に偏差値を求めてみよう。

A:80 B:60 C:60 D:90 (点)であったとする。

まずは平均を求める。

平均:\frac{80+60+60+90}{4}=72.5

 

次に標準偏差を求める。

STEP1:各データの偏差を求める。

※偏差とは、各値から平均値を引いた値である。

Aの偏差:80-72.5=7.5 

Bの偏差:60-72.5=-12.5

Cの偏差:60-72.5=-12.5

Dの偏差:90-72.5=17.5

 

STEP2:偏差の2乗の合計の平均を求める。

\frac{(7.5)^2+(-12.5)^2+(-12.5)^2+(17.5)^2}{4}=168.75

 

STEP3:二乗した分を平方根で元に戻す。

\sqrt{168.75}=12.99‥≒13

 

この値が標準偏差である。少し難しい計算かもしれないが、基本的にはデータのばらつきを数値化するために、平均との差を取り、それを正の数であらわすために2乗してルートをつけているだけである。この数値によって先ほどのグラフのような目で見えるデータのばらつきが数字で表されている。

 

そして、日本での偏差値は次のようにして求められる。

偏差値=\frac{得点-平均点}{標準偏差}×10+50

 

つまり、自分の得点が平均よりも大きいとき、そして、標準偏差が小さい(データのばらつきが小さい)ときに偏差値は大きくなる。また、平均点をとると偏差値は50になるようになっているのである。では、AからDの偏差値を計算すると‥

Aの偏差値:\frac{80-72.5}{13}×10+50≒55.8

Bの偏差値:\frac{60-72.5}{13}×10+50≒40.4

Cの偏差値:\frac{60-72.5}{13}×10+50≒40.4

Dの偏差値:\frac{90-72.5}{13}×10+50≒63.5

このようにして求めることができる。

 

標準偏差というデータのばらつきを考えることで、より正確な優劣をつけることが可能になり、現在も多くの試験などで使われているのである。

 

最後に意外と知られていないが、偏差値は負になったり、100を超えたりすることもありえることを伝えて終わりにしよう。

これは、99人が100点で1人が0点の場合、99人が0点1人が100点の場合において、偏差値を求めたものである。

超越数とはなにか

少し難しい話題になるが、まずは問題から。直感で答えてみよう。
次のうち、整数を係数とする代数方程式の解になりうるものをすべて選びなさい。
  1. 2.333333‥2.\dot{3}
  2. \pi
  3. sin 15°
  4. 2^\sqrt{2}
  5. 3+\sqrt{2}i
注:整数を係数とする代数方程式とは、定数項を含めたすべての項の係数が整数の、1次以上の方程式である。
例えば、x^4+3x^2+20=0は、整数を係数とする代数方程式であるが、\sqrt{2}x^7+ix^3+2x=0は、整数を係数とする代数方程式ではない。
 
 
 
 
では、まずは解答から。
答えは、1,3,5である。このように整数を係数とする代数方程式の解になる複素数のことを、代数的数という。では、1~5について1つずつ見ていこう。
 
1. 2.333333‥2.\dot{3}
見ての通り、循環小数である。このように無限に循環する小数は、すべて有理数であり、分数で表記することができる。分数⇔循環小数の式変形は高校数学の整数の性質でも扱われているので、やり方が分からない場合は確認しておこう。よって、この循環小数も分母、分子がともに整数の分数となるから、整数係数の1次方程式の解になる。
 
5. 3+\sqrt{2}i
一般的な虚数の形をしている。これは、整数係数の2次方程式の解となる。これを解に持つ2次方程式を、高校の知識だけで求めることができる。これは、前回の記事の最後の問題でもあるが、まだ解いていない人はぜひ解いてほしい。ヒントは、整数係数の2次方程式虚数解を持つならば、それと共役な複素数も解に持つということである。解答はこの記事の最後に掲載する。
 
2. \pi
\piは整数係数のどんな代数方程式の解にもならないことが知られている。証明は非常に複雑であるため、省略する。\piのように、整数係数の代数方程式の解とならないような複素数超越数という。この超越数について、この後は話を進めていく。
 
3. sin 15°
sin 15°は整数係数の代数方程式の解となるため、超越数ではない。しかし、超越数について以下のことが知られている。
「0でない代数的数\thetaに対して、sin\theta,cos\theta,tan\theta超越数である。」
これはリンデマンの定理から導かれる。なら、15は0でない代数的数だからsin 15°超越数だ!と考えた人もいるだろう。しかし、リンデマンの定理は度数法ではなく、弧度法であることに注意したい。
sin 15°sin \frac{\pi}{12}で、\frac{\pi}{12}は代数的数ではないので、sin 1°超越数とはいえないのである。
 
4. 2^\sqrt{2}
これも、超越数として有名なひとつである。そもそも\sqrt{2}乗とは何だろうか。高校数学では、指数が無理数となる場合は扱わないが、簡単に説明しておく。有理数の指数については高校でも扱い、定義しやすいのでそれを利用していく。2^\sqrt{2}を考えるときに、2^{1},2^{1.4},2^{1.41},2^{1.414},2^{1.4142}‥と考えると、このそれぞれの指数は有理数であるから計算ができる。そして、これを繰り返すとある値に近づくはずである。その値を2^\sqrt{2}として定義している。これも超越数になることの証明は複雑であるため省略する。
 
 
 
以上、問題のそれぞれについて見てきた。このように、ある数が超越数かどうかを示すのは簡単ではない。他に知られた超越数として、e(ネイピア数自然対数の底)がある。しかしながら、超越数である\pieの和 \pi+e超越数であるか今も分かっていない。
 
最後に、いくつかの複素数を思い浮かべてほしい。身の回りにある数でもいいし、少し難しい数でもいい、できるだけたくさん。
おそらく、今思い浮かべた数のほとんどは代数的数であろう。整数や、有理数の分数、整数の2乗根など簡単に考えられるほとんどの数は超越数ではない。しかし、ここに驚くべき事実をあげておこう。
ほとんどの実数や複素数超越数である。」
言い換えれば、「代数的数よりも超越数ははるかに多い。」ということだ。これは、カントールというドイツの数学者が発見し、数学的に証明されている。自然数や整数などの代数的数より、\pieのような超越数が多くあるということは、超越数の世界も奥が深いものである。
 
 
 
[問題の解答]

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この記事で週末に書き溜めておいた記事を消費してしまう。次の記事まで間が空くかもしれないので、今日あげた問題をじっくり考えておいてほしい。

 

この記事だけのヒントを書いておく。

a_nは、言い換えると2n\piの整数部分を表している。

勝手に範囲を絞らない

まずは、昨日の記事の最後の問題の解答から。

まだ読んでない人は、下のリンクから!!

kanchan-math.hatenablog.com

 

 

 

 

 

[解答]

  1. 2018が4の倍数なら負の整数に、8の倍数なら自然数になる。2018は、4でも8でも割り切れないので、与式は整数でも自然数でもない。
  2. k=8のとき、与式は最小の自然数(2・8i)^4{16}^4になる。与式で表されるほかの自然数はすべて{16}^4を約数に持つので、最大のn{16}^4である。

 

 

今日の話題は、2番の解答に関することである。2番の解答は、答えは合っているものの、記述としては不十分である。前回の記事において、2番の問題はkについて何も書かれていなかったのに気付いただろうか。つまり、この問題においてはk自然数かわからない。ましてや、実数でさえないかもしれないのだ。よって、前回の記事だけでの議論だけでは解答を十分に書くことができない。

 

kが分数や負の数の時ときはどうなるか、虚数のときはどうなるか…指数を複素数までに拡張するなど非常に高度な議論が必要になる。実際、これらの場合に自然数になることはないが、解法の過程を書かなければいけないとき、勝手にk自然数として話を進めてしまえば、思わぬ誤答につながる場合もある。

 

何も書かれていないときに、複素数まで拡張して考える必要があるかは難しいところである。ここに、1998年学習院大学の入試問題をあげる。

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この問題、難しいわけではないので解説は省略するが、解答はどうなっただろうか。n=1,2,5,7?それとも、n=1,2,3,5,7

どちらの答えも正しいといえるのだが、実際に大学側が用意していた解答は後者のほうである。この2つの答えは何が違うか、それは、複素数まで拡張して考えたか、それとも拡張していないかである。

ルートがあると、そのルートの中は正であると考えてしまう。しかしながら、大学側は、ルートの中が負になる場合も考えなければいけないと言っているのである。このように、大学入試でさえ実数で考えるか、複素数で考えるかで解答に違いが出てしまう。実際、このような問題は難しいが、複素数まで考えられそうな場合には、考えておくのが無難かもしれない。

 

大学入試などでも、場合分けをして考える問題は多くある。このとき、どの数字の世界で考えているかを明確にし、勝手な世界に入り込まないことが大切である。

 

次回は、超越数についての話をしようと思う。次回の話に少しだけつなげるために、今回のことも絡めた1問を出題して終わりにする。

[問題]

3+\sqrt{2}iを解に持つ、係数が整数の方程式を作りなさい。