超越数とはなにか
少し難しい話題になるが、まずは問題から。直感で答えてみよう。
次のうち、整数を係数とする代数方程式の解になりうるものをすべて選びなさい。
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注:整数を係数とする代数方程式とは、定数項を含めたすべての項の係数が整数の、1次以上の方程式である。
例えば、は、整数を係数とする代数方程式であるが、は、整数を係数とする代数方程式ではない。
では、まずは解答から。
答えは、1,3,5である。このように整数を係数とする代数方程式の解になる複素数のことを、代数的数という。では、1~5について1つずつ見ていこう。
1. ()
見ての通り、循環小数である。このように無限に循環する小数は、すべて有理数であり、分数で表記することができる。分数⇔循環小数の式変形は高校数学の整数の性質でも扱われているので、やり方が分からない場合は確認しておこう。よって、この循環小数も分母、分子がともに整数の分数となるから、整数係数の1次方程式の解になる。
5.
一般的な虚数の形をしている。これは、整数係数の2次方程式の解となる。これを解に持つ2次方程式を、高校の知識だけで求めることができる。これは、前回の記事の最後の問題でもあるが、まだ解いていない人はぜひ解いてほしい。ヒントは、整数係数の2次方程式が虚数解を持つならば、それと共役な複素数も解に持つということである。解答はこの記事の最後に掲載する。
2.
は整数係数のどんな代数方程式の解にもならないことが知られている。証明は非常に複雑であるため、省略する。のように、整数係数の代数方程式の解とならないような複素数を超越数という。この超越数について、この後は話を進めていく。
3.
「0でない代数的数に対して、,,は超越数である。」
=で、は代数的数ではないので、は超越数とはいえないのである。
4.
これも、超越数として有名なひとつである。そもそも乗とは何だろうか。高校数学では、指数が無理数となる場合は扱わないが、簡単に説明しておく。有理数の指数については高校でも扱い、定義しやすいのでそれを利用していく。を考えるときに、,,,,‥と考えると、このそれぞれの指数は有理数であるから計算ができる。そして、これを繰り返すとある値に近づくはずである。その値をとして定義している。これも超越数になることの証明は複雑であるため省略する。
以上、問題のそれぞれについて見てきた。このように、ある数が超越数かどうかを示すのは簡単ではない。他に知られた超越数として、(ネイピア数・自然対数の底)がある。しかしながら、超越数であるとの和 は超越数であるか今も分かっていない。
最後に、いくつかの複素数を思い浮かべてほしい。身の回りにある数でもいいし、少し難しい数でもいい、できるだけたくさん。
言い換えれば、「代数的数よりも超越数ははるかに多い。」ということだ。これは、カントールというドイツの数学者が発見し、数学的に証明されている。自然数や整数などの代数的数より、とのような超越数が多くあるということは、超越数の世界も奥が深いものである。
[問題の解答]
この記事で週末に書き溜めておいた記事を消費してしまう。次の記事まで間が空くかもしれないので、今日あげた問題をじっくり考えておいてほしい。
#自作問題
— math math マッスル (@mathmathmuscle) 2018年10月1日
今日はこれ pic.twitter.com/R8mEoW2nsk
この記事だけのヒントを書いておく。
は、言い換えるとの整数部分を表している。